「筋膜」に対して徒手介入することの必要性を考える

 

 筋膜リリース、筋膜ストレッチ、そして筋膜マニュピレーション、近年は一般市民にまで「筋膜」の存在が認知されており、医療従事者だけではなく、社会としてより注目を集めている組織であると言えると思います。沖縄で働いていても、患者さんから筋膜について質問されることが増えてきています。

 

 今回、Fascial Manipulation 国際コースレベル1を受講したことも踏まえて、筋膜について学んできたこれまでを再考していけたらと思います。

 

 まず、最初に筋膜を認識したのは、やはりANATOMY TRAINです。書籍も読みあさりましたし、7,8年前、当時、著者のThomas Myers 氏の東京での初の日本公演にも参加しました。その頃は概念自体を学んだ印象だけが深く残っています。どちらかというと、「こういうラインで繋がるから、こういう事象もありえる。こういった治療反応もありえる。」などといった、解釈に利用していただけだなと、今では反省となっています(笑)

 

 そして、だいぶ時間が空きますが、学びとしては一昨年から去年にかけて、MPS研究会(筋膜性疼痛症候群研究会)で小林医師のお話を拝聴し、改めて臨床的重要性を再認識致しました。Fascia( 線維性結合組織:筋膜、髄膜、胸腹膜、脂肪織、靭帯、腱など)を解剖学、動作評価、超音波エコーを絶妙に組み合わせた治療過程に感動し、共感し、より精を出して取り組んできました。

 MPSの医師の先生方は、最終的に生理食塩水リリースがあり、軽度ではありますが、侵襲的に介入することが出来るので、自分の中では、如何に徒手介入で再現ある介入ができるのかということを考え続けながら、現在まで取り組んできています。もちろん、医療職種間連携で、任せるところはお願いして、セラピストとして運動療法を磨けばいいのですが、やはり出来ることは多いほうがいいと思う私自身の性分もあり、常に考え続けたい部分であります。ソマセプトという経皮的刺激ツールにも出会え、浅層の刺激としては、セラピストも利用できる素晴らしい選択肢でもあります。

 

 今回受講した筋膜マニュピレーションは、基本的に深層膜を刺激する手技(内臓へのコースもあります)であり、私に欠けていた部分をここまでかと思うほど、刺激して頂きました。MPSもFM(筋膜マニュピレーション)も、呼称は違えど、高密度化している組織を対象にしているので、理解に抵抗はなく、よりスムーズに入ってきました。1番の驚きは、矢状面、前額面、水平面(その他細かく存在します)の筋膜ラインをかなりシステマティックに研究されており、症状と関連が深い刺激点を刺激することで高い再現性のある反応を引き出すことが出来ることです。必要事項の知識を把握するだけでも大変ではありますが、その反応効果はかなり大きいものだと感じています。 最終的には、原因となる生活動作や、仕事での動作の変容や本人の自覚的な気づきに繋げていく必要はあると思います。

 もちろん、筋膜ですべてが解決するとは思っていませんが、それで見落としている数もかなり多くいると思います。今回の筋膜マニュピレーションのコースは、徒手介入におけるセラピストの可能性をとても感じさせて頂けたありがたい時間でした。まずは講師やアシスタントの先生が教えて頂けることを、そのまま出来るように形を学ぶ。

 どんな講習や実技ワークでも、ゆくゆくはセラピスト自身の手で感じることがやはり大切だと思います。「あのとき、先生はこのことを言いたかったんだな」、「実技の時のあの表現は、こういうことが言いたかったんだな」と、自分自身の臨床の中で気づけることが1番大切なんだなと思います。文章化出来なくて、伝えることができない感覚やセンスは、やはり自分で磨くものだなと思います。その磨きの質を上げるためにも、自分だけの解釈のみではなく、いろんな方の話を聞くことで、いろんな事柄に触れることでより洗練化されていくように思います。

 

 痛みは、レントゲンの発明で骨がクローズ化され、MRIで筋に、そして脳に、いろんな変遷を経て、現在は学会等では痛みを生物心理社会的モデルで解釈することが提唱され、それが当たり前になってきています。そして、認知行動療法がエビデンスの高い治療と認知されているのは言うまでもありません。もちろん、それは否定するまでもなく大切なことで、多角的視点で患者をとらえることは非常に意義深いことだと思います。

 ですが、思っている以上に筋骨格系の機能障害を見逃しているケースも多くいて、その要因のほとんどが歴史的にも見逃されてきた「筋膜」含む、線維性結合組織と言われています。受容器も豊富で、痛みを解決していく上では、無視できない、重要な組織であると確信しています。

 

 いろんな意味で今回の受講は非常に刺激的で、実り多い機会でした。筋膜を軸として積み上げてきた臨床感を、さらに強くして頂けたありがたい場でした。まだまだな部分も多くあることに気づかされ、もっともっと学んで、感じて、進んでいきたいなと思います。

 

理学療法士 比嘉俊文

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